7月25日〔金〕

今日も相変わらずの寒さの中で目を覚ます。
いつものトーストと目玉焼きをコーヒーで流し込みながら今日の予定を考える。
明日には道東を離れるので、行っていない摩周湖と野付半島をメインに走ることにする。


メルクールに荷物(といっても防寒着と雨具、撮影機材のみ)を積み込みエンジンをかける。
今日はいつにも増して寒いのでジャケットを重ね着、和琴から飛び出して最初に向かったのは摩周湖。
始まりの地だ。



摩周第3展望台に着くと、早朝だということもあり人影はまばらです。
どうやら朝日を映しこむ摩周湖を観るために来ている人達のようで、観光客というよりはカメラマンという感じの人達です。
「やっと摩周湖に来れましたぁ♪」
「ここが樹ちゃんルートの始まりなんだよなぁ(感動)」
「はい、こういう感じで佇んでたんです」
「良いね、一枚撮るよ?」

ピピッ パシャッ

「ふふっ、摩周の妖精は捕まえられましたか?」
「ああ、バッチリ!」
第3展望台
撮影している間に観光客らしき人たちもやってきました。
今朝は雲が出ていて摩周岳を望めませんが、湖面は見ることが出来、摩周ブルーを堪能しました。


「しかし摩周岳は姿を見せんなぁ。」
「完全に雲の中ですね。」
「まぁ湖面を見れただけマシかな?」
「裏摩周からなら見えるかも知れませんよ?」
「じゃ裏摩周展望台へ行ってみるか。」





人が増えてきた第3展望台を後にして裏摩周展望台へと向かいます。
一旦弟子屈市街へ出てから東へと進み、養老牛温泉手前の交差点を左折。
スノーシェルターを抜けるとすぐに左折、この入り口はついオーバースピードで突入してしまいます。
到着した裏摩周展望台は摩周湖で一番新しい展望台です。
以前は知る人ぞ知る隠しスポットでしたが、今ではかなり有名になってしまいました。

「おっ初めて健在な樹ちゃんの木を確認!」
「ううっよかったー、全滅してませんでした。」
「これだけ太い木なら呪いに耐えられるのか。」
「呪いじゃありませんっ!」
とりあえずイベントシーンの再現です。
ところがここで問題発生!
じつはこの枝3mくらいの高さにあるのですよ。
周りを見ても足場になるのは階段の手摺のみ。
今は人が居ないとはいえ、下の駐車場には人の気配が…

ええ、やりましたよ。

やりましたともさっ!


人形持って手摺の上に仁王立ち!!
裏摩周展望台
か〜っ こっ恥ずかしか〜!!(釣りキチ)

さすがに人が居る前ではできませんね。
こんな姿を人に見られたら五体投地して謝るしかありません。
生まれてきてゴメンナサイw
裏摩周展望台は他の展望台に比べて標高が低いため、湖面を近くに感じることができます。
この日は曇天のため摩周岳を見ることができず、湖面も摩周ブルーにはほど遠い色でした。

摩周湖は流れ込む川も、流れ出る川もない湖。
完全に外界とは隔てられた姿は、まるで時の流れに取り残された世界。
樹はこの摩周湖という存在を表すキャラクターだったのだと再確認してまいました。
手摺に立たせて撮影
「晴れてたら涙が迸るほど綺麗な景色だったのになぁ…」
「へっへっへっ、それでしたら良いトコロ有りますぜダンナ〜。」
「そのイヤらしい笑い方やめて、F.O.Gさんに怒られるから。
 で、良いトコロって何だ?」
「はい、ここから北に少し行くと摩周湖の水が湧き出している泉があるんですよ〜。」
「そなの?じゃぁソコ行くからナビお願いね。」
「うふふ〜 私、「北の国から」観てから海馬(トド)肉って食べてみたかったんですよ〜♪」
「くっ、逞しくなったね樹ちゃん… 
 まぁ羅臼方面に寄るつもりだから、お昼は海馬料理にしよう。」
「やった〜♪」




ということで、やって来たのは神の子池。
大型車侵入禁止のグラベル路の奥にあるため、観光客が比較的少ないスポットです。
































なんでバス停まってるん?

















30人乗りくらいの小さいバスっちゅーても大型車やろがっ!

こういう傍若無尽蔵な観光業者がいるから名勝地ってのが荒れていくんだよ。
ツアー客ってのも連れて来てもらってるだけで自分で辿り着いてるワケじゃないから、自分の庭先のようにやりたい放題。
ホテルを出て、座ってたら名勝地。
これじゃあ、近所の公園に来たが如きの振る舞いしかできない訳です。
ワイワイガヤガヤと騒ぎまくる輩が立ち去るまで駐車場で待つことにしました。
阿呆共がバスで去ってから、静かになった神の子池へと向かいます。

辿り着いた先には、先程までの騒々しさが嘘のような神秘的な世界が広がっていました。

まるで冗談のような青。

ピュアブルー、そんな陳腐な言葉でしか表現できない自分がもどかしくなるような青。

神の生み出したる青。
神秘の蒼
さっきまでの怒りが嘘のように鎮まっていきます。
神の子という名が相応しい神秘に魅入られてしまいました。

「はぁ…凄いなこりゃ…」
「でしょ?ここは私のお気に入りの場所なんです。
 ここに来るとイヤな事なんか全部忘れて、やさしくなれるんです。」

「ああ、何となく解るよ。」


ここはホントに凄い所です。
たぶん次に北海道に来るときも、絶対に来てしまいますね。
シーン再現
「さて、そろそろ行きましょうか!」
「そうだな、お昼までには羅臼に着きたいしね。」
「海馬肉♪とっど肉〜♪」




神の子池から北上、道道827号を経由して根北峠を越えます。
この根北峠、タイトなコーナーが連続していて
スンゴイ楽しい道です
個人的には美幌峠よりもこっちの方が好き。

フルバンク〜フルバンク〜♪

そのままオホーツク海岸まで出て国道335号を北上、羅臼へと入ります。
お昼までまだまだ時間があるので知床半島の走行限界・相泊(あいどまり)まで行ってみることに。
道の先端まで来ると、行き止まりの看板がありました。
この先は石がごろごろ転がる海岸線が続きます。

メルクールを降りて、最果てを目指して歩き始めましたが、遙か彼方まで昆布漁の番屋が続いていたので途中で断念してしまいました。

やっぱりここもロングスカートにサンダルで来る場所じゃないと思うのだが…
道の終わり
来た道を少し戻ると左手に相泊温泉があります。
ここは堤防と海との間の狭い海岸にある温泉で。簡単ですが男女別に分かれた無料露天風呂です。
せっかくなので入浴していくことにします。
「わーい、温泉ですぅ♪」
「ちょっと待って、入る前に撮影しておこう。」
「誰も居なくて良かったですね。」
「うい、完了。んでわ後ほど…」
「覗いたら頃シマスよ〜。」

お湯は少し熱めですが、風が冷たいため長湯できます。
浸かっていると単気筒のエンジン音が止まって、ライダーが一人やって来ました。
人が来ないうちに
早速温泉に浸かりながら情報交換します。
京都からやって来たT君は北海道初体験だそうで、ライダーハウスを利用しているそうです。
ここに来る前に瀬石温泉に入ってきたらしく、俺にも勧めてくれました。
彼はこれからカムイワッカ経由で網走へ向かうということなのでホワイトハウスをお勧めしたりしながらのんびり温泉浴。こういうのって旅の醍醐味やね。


相泊を後にして、T君オススメの瀬石温泉に行きます。
が、

道から丸見え。

しかも北の国からの舞台にもなったので観光客がイッパイでした。
うーん、メジャーになると温泉の意味がないのう。
吹上温泉もそうだったし…
晒し者の湯
瀬石温泉に入るのはあきらめて、ヒカリゴケを見に行きます。
ヒカリゴケの洞窟は来るときにチェックしていたのですぐにわかりました。
到着すると狭い駐車スペースに観光バスが横付けされています。
うーん、今日は朝から観光客だらけじゃわい…
「ヒカリゴケってどれですか?」
「↓って看板の辺りに生えてるヤツじゃないか?」
「光ってませんよ?」
「レンズのような組織が光を反射させて光るらしいから角度を変えれば光って見えるハズなんだけど…」
「光りませんねー 曇りだからかな?」
「洞窟の奥まで光が届いてないからなぁ。」
ヒカリゴケの洞窟
残念ながらヒカリゴケは光量不足のため、ちーとも光ってくれませんでした。
まぁ温泉は堪能したしお腹も空いたので、そろそろ羅臼市街へ戻ります。




羅臼の道の駅知床・らうすに併設のレストランに海馬料理の店があったので、さっそく入って海馬の陶板焼き定食を注文。
さあ、ついに海馬肉料理が運ばれてきました。
「いただきま〜す。」

んぐんぐ…
「うっ 硬くて血生臭くて美味しくないですぅ(T_T)」
「ネタとしては美味しいが、肉としては圧倒的に不味いな。」
「北海道に来て初めて不味いもの食べましたぁ。」
「1500円もしたんだから残さず食えよ。」
「あい〜(T_T)」
出た!トド肉
海馬肉は生姜たっぷりの味付けでしたが、それでも血生臭さを消しきれていませんでした。
正直言って不味いです。
ネタに一度食べたらもういいやって味でした。
「ううっ何とか食べきりました〜」
「付け合わせの方が美味しかったな。」
「むこうに座ってる人達の『アレ食べてるヤツ初めて見た』って言ってるのが聞こえた時は、なんだか泣きたくなってきましたよ〜」
「言うな、惨めになる!」
「お口の中が、お口の中が鉄の味です〜」
「下で口直しにソフトクリームでも食べよう…」
「お勘定おねがいします〜」
「お客さん、こちら海馬料理賞味証です。」



なんと海馬肉を喰っただけで、証明証をもらってしまいました。

表彰したくなるほど不味い肉やったんかいっ!!
不味かったです、いやマジで
イヤな感じにお腹もふくれたので、今回の旅のクライマックス・野付半島へと向かいます。
上陸二日目に近くまで来たのですが、旅のトリに残しておいたのです。

3日前に走った道をのんびり鼻歌口ずさみながら流します。
そうしているうちに野付への右折路に遭遇、少々躊躇いつつ旅立ちの地へと舵を切る。
道の両側が海というロケーションの中を走っていくと、右手にナラワラが見えてきました。
「道から遠いですね。」
「樹ちゃんのバックに入れるには小さすぎるなぁ。
 よし、最前線までいってみるか!」
「え、ナラワラって確か泥沼でしたよね?」
「ゴアテックスの靴だから踵まで沈んでもOKだ。」
「無茶はしない方が、ってもう行ってるしッ!」
「おおっ沈む沈む…」
「ま、待ってくださいよぉ〜」
「ははは〜捕まえてごらん〜♪」
「もうっ 泥沼の中で何爽やかぶってるんですかッ!」
泥沼最長不到
これ以上は無理って所までやって来てから撮影です。
道路から丸見えとはいえ、これだけ離れると何やってるのか解らないでしょう。
撮影を終わって泥沼を引き返すと、つられた人々が泥に沈んでユカイな踊りを見せてくれてました。

さぁ、踊れ!ユカイに!




ナラワラを後にして、いよいよ最後の地トドワラです。
バイクで行けるのはここまで。
ここからは徒歩で先端へと向かいます。
案内板では徒歩20分と書いてあるので、売店でお茶のペットボトルを買って出発します。
観光用の馬車もあるのですが、待っているのは性に合わないのでパス。

野付半島はわりとマイナーな場所だと思っていたのですが、観光客が多く、トドワラまでの遊歩道は行き交う人々で賑わっていました。
旅立ちの地へ
この辺りは原生花園になっていて様々な花が咲いており、花好きなオバサン達が楽しそうに歩いています。
もっとも、ここを神妙な面持ちで歩いてるヤツは風雨来記の巡礼者だけでしょうね。
樹の墓場
トドワラに到着です。
木の墓場と言われるとおりの風景が広がり、死んでなお立ち続ける…という樹の言葉が鮮明に甦ってきました。
本当に寂しい所です。
木の骸が横たわる中を歩き続けると、一本の橋に辿り着きました。
この橋を渡ればいよいよ最後の地です。


と、写真を撮っていると突風が吹いて俺の帽子が飛ばされてしまいました。


ネタキタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
トド橋(笑)
「ああ〜ん、待ってくだ(ボチャン)・・ああん

「ああ〜 帽子落ちちゃいましたよ。」
「あ゛〜 別にいいよ、気にしないで。」


帽子は転がる間もなく海に落ちてしまいました。
1000円で買った帽子とはいえ、猫ちんちょっとショック!
このアングルもあったよね
「この辺りの木も次来る時にはあるかどうか…」
「この子たちはずっと何年も昔に枯れてしまったのに今もこうして立ち続けているのね…」
「そうだな…」
「木は、枯れて倒れても…土に還って新しい芽生えの為の力になるわ
でもこの子たちは…この樹は私ね。
本来の行くべき時にいけなかった可哀相な子達…」
そして最後の場所へ…

樹ィィィィィィ!!

なんだか潮位の関係で地形が変わってますが、おそらくはここだろうという場所に辿り着きました。

樹の旅立ちを見送った場所でしばし放心…
今回の旅が終わったような気持に襲われて、動く気力がなくなってしまいました。
(T_T)



「さて…別れは新たな出会いへの旅立ちだ。そろそろ行こうか…」
「はーい♪」
「nagareさんが来る前に和琴に帰っておきたいな。」


二輪便利帳の書き込みの風雨来記という単語に反応して連絡をくれた、札幌にお住まいのnagareさんという方が和琴に駆けつけてくれることになっているのです。
テントの位置がわからないとアレなので、nagareさんより早く着くために寄り道せずに帰ります。

「あれ?開陽台経由の方が早いんじゃないですか?」
「いや、根北峠が楽しかったから…」
「寄り道しないって言ったのに〜!」





和琴に到着して周りを見ると皆さん半袖で遊んでおられます

俺はジャケット2枚重ねでも寒いのに、何故だッ!!



@地元の方々はこれくらいの気温はへっちゃらへー。

A俺様実は風邪引いてる!?

Bボウヤだからさ…




Aの可能性が圧倒的に高いが、個人的には
@を強く推していきたい。

などとアホやってると寒気と目眩が…
現状を認識した途端に風邪の諸症状に襲われてしまった。

「さっきまで元気だったのに…」
「うー、俺は新陳代謝がやたらと高いらしくて、見ている間に風邪を引くので有名なのだよ。」
「子供の風邪の引き方ですね。」
「よく言われます。あ゛〜ちょっと仮眠するからnagareさんが来たら起こしてね。」
「はい、ゆっくり休んでくださいね。」

代謝率が高いので治るのも早い代わりに風邪引くのもあっという間です。
とにかくnagareさんが来るまでに少しでも快復させておく為にもスリープモードで待機です。



ろ…こさ… 黒猫さんっ 起きてください! nagareさんが見えられましたよ!!」
「うにゅ… 生ウニ食べられるおー…」
「しょーもないボケはいいですから起きてくださいっ」

テントから出ると、背の高いお兄さんが立っておられました。

「黒猫さんですか?はじめましてnagareです。」
「あ、はじめまして黒猫です。」
「樹です〜♪」


初めてお会いするnagareさんは背が高い、北海道の裏情報をいろいろ教えてくれるナイスガイでした。
nagareさんのエアトレックで買い出しに行った後、宴会開始です。
さすがnagareさんは地元民だけあって美味い生ラムをチョイスしてきてくれていました。
さらに美味いと評判のホッケまで…

nagareさん、うみゃい うみゃいよこの肉

本州だとラム肉なんてほとんど売ってないので、美味い肉の区別なんかつきません。
nagareさん謝謝!!
nagareさん
ビールを呑みながら北の大地について語らいます。
野付半島の話をすると、ナラワラは車両が入れる道があることや、最後の地は先端に島ができてしまっていることなど地元情報をたくさん聞かせてもらいました。
さらに海馬肉については、「海馬肉や熊肉が美味かったら、全国に出回ってるよ」とのコメントを頂きました。
いや、まったく仰るとおりです。
明日、旭川経由で帰るのに一番走りやすいルートなども教えてもらったりと、楽しく為になるお話を聞かせてもらってると、初日にお会いしたかったと思ってしまいます。

宴会がお開きになり、これから温泉に行くというnagareさんを見送ると長かった一日が終わります。

栄養補給もしたし、明日は小樽まで戻らなくてはならないので、体を休めることにします。

おやすみ〜♪




本日の走行距離 : 478km
積算走行距離  :2,498km