7月21日〔月〕

 AM3:30、もうすぐ小樽に着くから降りる準備しろーという内容の放送で起こされる。
バイクは最後に下船するので、まだまだ時間に余裕がある。とりあえず歯ぁ磨いてコンタクトを入れつつ、荷物をまとめていきます。
 身支度を整えて後部デッキに出てみると、ちょうど接岸寸前です。

ソロモンよ、私は還って来た!

 この「到着」という瞬間は船旅ならではの魅力だろう。

 今朝の小樽は曇り、昨夜は雨だったのか路面が所々濡れています。北海道の気温は本州より10℃くらい低く、早朝ともなるとかなり冷え込みます。さらにバイクは吹きさらしの状態なので、真冬並みの体感温度となってしまいます。
寒っ ごっつ寒っ!
 慣れた旅人は乗船時に防寒装備を船内に持ち込んでおり、この時点で寒さに震えているのは北海道経験の浅いライダー達です。車両甲板に降りると、荷物を広げて冬服を出す時間がないため、下船してからまた荷ほどきするハメになっちゃいますので要注意。
 
 
 接岸後、ライダーの下船開始まで、岡山から来たタンデムライダーの夫妻と情報交換です。なんでも奥様は初めての北海道だそうで、こちらの気温の低さに吃驚なさってました。上陸後に小樽の市場へ朝食に行くつもりだそうですが、最新の地図に市場が載ってないので困っているそうです。私の古い地図で確認すると確かに載っています。ひょっとして閉鎖されたのかもと考えましたが、とりあえず行ってみるとの事です。市場が営業しているといいのですが。

 バイクの下船が始まり車両甲板へと移動します。降ろしていた荷物を相棒に固定していきます。新日本海フェリーは乗艦の際にバイクから荷物を降ろしてしまわないといけないのです。初めて乗る人はこれに戸惑うでしょうね。
準備が整い、エンジンに火を入れます。気温が低いため初めは不規則だった回転が、だんだんと安定していきます。

そして

甲板員のGOサインとともに

地上への階梯を駆け下り

北の大地へ

今、降り立つ…


いざ北の大地へ!!


 小樽から札幌へと抜ける道を走っていると、朝日が顔を出しました。これからの旅が太陽に照らされ歩めることを祈りつつ進路を北へととります。さすがに早朝だけあって、交通量が少なく快走ペース。予定より早い時間に留萌に入り、コンビニで朝食です。この時点で7時、出勤途中の方々に見られながら、筋子おにぎりを頬張ります。

 留萌で燃料を補給しようかと思ってたけど、北海道の快適道路のおかげで燃費が伸びており、余裕で羽幌まで行けそうだと判断。

駄菓子菓子・・・
初めの朝日
GS開いてねぇ〜!

8時を過ぎてもガソリンスタンドが開いていません。
もしかして休日なので休みなのかッ!
いきなりゲームオーバーの予感に恐怖しつつ燃費走行で北上を続けます。
と、丘を越えると視界いっぱいの向日葵畑が・・・
停車すると燃料を消耗してしまいますが、停まらずにはいられません。相棒を路肩へ寄せ、向日葵畑へと駆け下ります。
太陽の花
「すごーい!見渡す限りの向日葵畑ですー!」
「向日葵の向こうには水平線しか見えないな。」
「こんなにたくさんの向日葵を見るのって初めてです。」
「最近はハムスターが流行ってるからな、需要が伸びているのかも。」
「えっ、ハムスターの餌用なんですか?」
「もしくはビールのつまみw」


実際、観光目的以外だとハムスターの餌用以外に思いつかないんじゃが、本当のところはどうなん?


 チャリダーの方と向日葵畑で撮影しまくり、燃料を気にしながら北上再開です。「太陽の花(奥井雅美)」を口ずさみながら遠別町に入ります。この時点で燃料は底を尽きかけていて、敗戦間際の日本軍の心境です。ここが我々の最後の希望、セガにとってのドリームキャストのような物です。いつ止まってもおかしくない状態で遠別市街に進入、右手に見えたJ●MOへと接近すると…

 
うっしゃぁぁ!、開いてる!!

 給油しながらオヤジさんに話を聞くと、遠別以南は開店時間が遅いとのこと。まったく驚かせてくれます、ちょびっと泣き入ったじゃないか。

 ガソリンを満タンにして快走再開、一気に
サロベツ原野に侵攻します。
サロベツ原野は電柱も何も無い原野に、ただ道が延びているという場所で、以前に渡道した時に一番感動した風景です。
 オロロンラインから道道106号に入り、天塩川を渡るとサロベツ原野です。


が、

なんじゃあ こりゃ〜!?(byジーパン)
風景台無し
「風力発電の風車ですね。」
「イヤ素で返されても困るんじゃが… ぬぅ、これがサロベツの風車群か。」
「まぁまぁ、原発が建設されるよりマシじゃないですか。」
「そりゃそうだが、何もサロベツに建てんでもいいだろうに。景観がガッカリじゃよ。」
「わたしは結構好きですよ?人が自然と共存しようとする姿勢が感じられますから。」
「まぁサロベツの端の方だしなぁ。原野のど真ん中やったら、さすがの俺も暴れるわ。」


 実際この辺りは市街地の外れで、サロベツ原野との境界です。国定公園にも指定されていない地域のことを、余所者がとやかく言うのは筋違いですね。


 風車群を後にサロベツ原野を北上し続け道道444号へ右折、この旅で最初の風雨来記スポット・
サロベツ原生花園へ到着です。ここはそんなにメジャーな場所ではないのですが、休日だということで観光バスがたくさん停まっていてツアー客がいっぱいです。
人のいないスキに
「わぁ、ずーっと向こうまで原野ですね。」
「ホント見渡す限り手つかずの大地だな。森林なら地元でも見れるけど、自然の原野ってのは滅多に出会えるモンじゃないな。」
「わたしエゾカンゾウを楽しみに来たんだけど…咲いてないですね。」
「今年は例年より寒いみたいだから、まだ時期が早いんじゃないか?」


 もっと花が咲き乱れているのを想像してたのですが、草原が広がるばかりで原生花園という感じじゃありません。しかし、一万三千fの広大な泥炭地であるサロベツ原野、その本当の姿を体感することができました。いままでは海岸沿いの風景だけがサロベツ原野だと思ってましたゴメンナサイm( _ _ )m


 原生花園を後に再び海岸沿いの道道106号に戻り北上を続けると、以前出会った風景と再会できました。
天空への回廊

空へと吸い込まれていく道

道へと滲み出す空

自分の大きさがわからなくなる

消失点だけの世界

現実に溢れ出た

虚構の世界
海の向こうに浮かぶ利尻富士

青い空と蒼い島

碧の水平線と緑の地平線

とても奇妙な風景

酷くやさしい世界

利尻島を望む
この道は日本で一番単純な道、それ故最も魅力的な道。
今日はこの風景を味わうために北上し続けたと言っても過言ではありません。
これから北海道を訪れる人、ここへは必ず立ち寄ってみてください。
世界に祝福されるとはこういう事です。



 サロベツの道を北上しつづけて、原野の終わりが見える頃、ドライブイン
こうほねの家に到着です。
別名、風雨来記スポット・
下サロベツ海岸
ここはサロベツ原野にある休憩施設で、海岸までの遊歩道脇にはたくさんの花が咲き乱れていました。原生花園よりも花が多く、エゾカンゾウも見ることができました。
 浜辺に出ると、ドライブ途中の家族連れやカップルが大勢水遊びを楽しんでいました。

「海です、海〜♪」
「あんまり波打ち際に近づくなよー。」


ゲーム中の背景で樹ちゃんを撮影です。わざわざ来た甲斐があるというものです。
背後からの視線を感じつつ撮影
 さて、そろそろお腹が空いてきたので稚内市街を目指します。稚内に入ってまず給油、最北端のホクレン旗をゲットします。
イクラ丼〜♪  続いて最北端の駅・稚内駅へ到着。ここで昼食、構内にある「ふじ田食堂」でイクラ丼を注文。味噌汁とシーフードサラダが付いて1,800円也。うーん、相場でしょうか?味はまぁまぁでしたが、店員は極めて無愛想でした。腹が減ってたとはいえ、他の店を探したら良かったかなぁ。
 
 食後、駅の傍のダイソーで小道具のフライパンを購入。稚内名物の
防波ドームへと向かいます。
「…大きいですね。」
「…大きいな。」
「もっと小ぢんまりしてるのかと思ってました。」
「俺も…」


 写真ではイマイチ迫力が無いですが、車と比較するとその巨大さが分かっていただけるかと思います。
 ここはイベントなどがよく行われる場所で、屋根の下に屋台が並ぶことがあります。雨の日でイベントが無い場合は旅人のテントが軒を並べるキャンプ場へと姿を変えます。
信号待ちの車の視線が…
 さて、この時点で一時過ぎ。頑張れば今日中にコムケまで行けそうです。
コムケ国際キャンプ場は必ず泊まらなければならない風雨来記ポイントなので、中途半端な距離を残すより今日中に走りきった方が、明日からの日程を楽にこなせそうです。というわけで、本日の駐留先はコムケに決定、再び海を左手に見て走り始めます。
 稚内市街から出ると、海から突風が吹き付けてきます。走っていると体力どころか体ごと持って行かれそうな風なので、1BOXカーのスリップに入って走り、なんとか
宗谷岬に辿り着きました。
日本最北端のドール
「わぷ、凄い風!髪が乱れます〜!」
「こんな強風でも観光客でいっぱいとは、さすが日本最北端の地だな。」
「北海道に来たなら、ここで記念撮影するのは定番ですからねー。」

あまりの強風のため、飛んでいるウミネコが目の前から前進できていません。いやむしろ後退してる!
その強風の中、記念撮影の観光客が途切れるのを待ちますが全く途切れる気配がありません。
あまりのんびりしていられないので、人目を気にせず記念撮影しました。このあたりから羞恥心が麻痺し始めてますね(^_^;)

「さぁ、ここから一気に南下してコムケを目指すぞ!」
「おお〜。」

 強風のオホーツク海沿岸をコムケキャンプ場へ向かってひたすら走ります。太陽が雲に遮られたことで気温もどんどん下がってきます。さらに進行方向を見ると…
ヤバげな雲やん♪

ちゅーか、今の状況で濡れたらあるのみ…

濡れてしまう前に合羽を着込み、雨対策を万全にして雲の下へ吶喊ッ!トラトラトラじゃぁ!


って、霧ーッ!?
イヤーンな雲が…
状況、濃霧ッ!濃霧であります隊長殿!!
視界は約20m。しかも雨とちがって奴等は裾等の隙間から、じわりじわりと侵入してきやがるのです。

いやーん、なんかしっとりしてきたーッ!!(本気泣き)

後で知ったのですが、この時オホーツク沿岸には濃霧注意報が発令されていたらしいです。とにかく白い世界を走り続け、なんとかコムケ国際キャンプ場へ到着です。
 管理棟で受付を済ませた後、テントの設営開始です。さすがに三連休の最終日だけあって閑散としています。

ゴメン嘘、正直に言います。


他に誰も居てへんやんけッ!




わはははッ独り占めじゃわいッ!!



独りぼっちのキャンプ場、管理人のおじさんだけが頼りです。タスケテ、オビワン・ケノービ!
母を訪ねて三千里のOPを口ずさみつつ、轍もテント張った木の下にテントを設営。
まだ明るい間に食事をすませてしまいます。(独りぼっちで怖いから)
 今夜のメニューはジンギスカンっぽい何か&サッポロクラシックビール(北海道限定)。

「でわ無事初日終了、カンパーイ!」
「かんぱーい♪」
「ぬ? うみゃい、うみゃいよこのビール!」

缶ビールとは思えない美味しさです。ジンギスカン(っぽい何か)もビールに合い、ペースが上がります。寂しくはあるものの、孤独なキャンプも味がありますね。
このビール激ウマー
 日が沈んで、食事の後かたづけを済ませて早々にテントに入ってしまいます。(小心者ゆえ)
今日の記録を付けていると、酔いも手伝って睡魔がおそってきました。
 明日は知床をまわって屈斜路湖を目指すことにして、今日はここまで。お休みなさい。


本日の走行距離 : 651km
積算走行距離  : 911km


追記
 夜中にテント前室のゴミ袋が漁られる音で目を覚ます。
どうやらキタキツネの襲来のようです。
おいおい、前室の中まで入ってくるのかいジョーイ?(誰?)
テントの中を荒らされてはたまらないので、ゴミ袋をテント外へ。食い散らされるだろうけど、明日の朝片付けることにしよう…zzz(-_-)